エルデルル冒険譚
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エルデルル
突然のことだが――ある日俺は、異世界に飛ばされた。
異世界といってもいろいろ思い浮かぶものはあるだろうが、俺が言ってる異世界とは異世界と聞いてまず思いつくような、ファンタジーファンタジーした世界である。まぁ、それぞれの人がそれぞれ考えるようなファンタジー世界であると思って頂いていいし、その程度の認識で十分である。
そう。つまりただ俺が言いたいことは、この世界はまさにゲームやアニメの中で見るような、剣と魔法と勇者と魔王な非日常であった。そして俺はその世界で勇者として戦うことになった。それだけの話である。
――そういうわけで俺は今、罵声が飛び交う騒々しい酒場で居心地悪く身をすくめていた。
ここは通称、ルイーザの酒場。この場所には町中の荒くれ者達や、一攫千金を狙う若者、そして腕に覚えのある強者が集う場所である。
「って、とりあえず来てみたのはいいけど……」
ここで俺は具体的にどうすればいいのだ?
そもそもいったいどうしてこうなったんだ。この状況はなんなんだ。
カウンター席の一番隅でうなだれながら、俺は激しく後悔する。俺がこんな事態に陥ってしまった全てに対する後悔。
本来ならここでその経過をじっくりと丹念に語っていくところであるし、そうしたいのも山々なのだが、いかんせん勇者である俺にはそんな事を悠長に話している余裕などはないのだ。
だから、まずはざっくりとここまでの経緯を簡単に話すことにする――。