天使がきても恋しない!

    1. 第3章 天使 対 悪魔

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     ムゥと別れたあと、僕は家に帰らないで公園のブランコに腰掛けてラヴの事やらを色々考えていた。
     天界の問題児。堕ちた天使。
     ラヴは何か秘密を抱えてこの町に来た――ムゥはそう言ってたけど……確かに不思議だ。
     どうしてラヴが僕につきまとうのか。愛とか大嫌いな僕なんかに……。
     これは裏があるに決まっている。僕の事が好きとか言ってるのもどうせ嘘だ。ふふ、そんな簡単に僕を籠絡できると思ったら間違いだぞ、ラヴ。
    「う〜ん。あいつの目的が分かればなぁ……」
     なんだかんだで、僕はラヴのことを何も知らない。あいつも僕のこと好きだっていう割には自分のこと全然話さないし……うん、怪しいなやっぱ。
     考えていても分からないからそろそろ帰ろうか――と僕は立ち上がった。
     そのとき――僕の視界に、砂場の中でしゃがみ込んでいるレヴィアンの姿が映った。
     あ、あの悪魔……なんでこんなところに。
     僕はゴクリと唾を飲んで小さな悪魔の動向を見守ることにした。
    「ワタシが丹精こめて育てたってのに……うわぁ……なんて酷いことするんだ……天使達め……ゆ、許さない」
     レヴィアンは両手で砂をかき集めながらブツブツ呟いている。あれか? 砂遊びでもしてるんだろうか。
     砂場の幼女の姿があまりにも微笑ましかったので、僕は思わず背後から近寄っていた。
    「くそぉ……悔しいよぉ〜切ないよぉ〜……ふええぇん」
    「こんなところで何してるんだい?」
     涙をポロポロ流し始めたその愛くるしい姿に、僕は思わず声をかけてしまった。
    「ってぇ、うひゃああああああ!!??? あ。おっ……お前はラヴと一緒にいた人間っ!? こ、こんなところでなにしてるんだっ!」
     レヴィアンは、こんなに驚かなくてもいいって位に体をびくりと跳ねさせていた。
    「いや……それはこっちの台詞だったんだけど……いや、僕はただ学校の帰りに公園に寄っただけだから……それで君は?」
     僕ができるだけ優しい顔でレヴィアンに尋ねると、彼女は足元の砂場に視線を向けて言った。
    「う、うん……ワタシはここにね、大事なものを作ってたんだけど……そ、それを天使に……天使に壊されてしまったの……」
     レヴィアンの悲しそうな瞳をみて、僕はさっきムゥがこの辺を歩き回っていたのを思いだした。……そうか。レヴィアンが丹精込めて作ったお城を壊してしまったのか。
    「そ、そっか……きっとムゥが壊したんだな……酷いことをする」
    「え? 人間、お前もワタシの気持ちを分かってくれるのかっ? ワタシは悪魔なのに味方してくれるのかっ?」
     レヴィアンのあげた顔は、とても輝やいていた。世の中の悪に汚れきっていない、純粋な笑顔だった。
    「悪魔も天使も関係ないよ。いくら天使だからってやっていいことと悪いことがあるんだ……大事に作ったものを簡単に壊すなんてひどいよ」
    「……お、お前人間のくせにいい奴なんだな」
     レヴィアンがぽーっとした顔をして僕の方をじっと見つめていた。やばい。ちょっとドキドキしてくる。お、落ち着け……僕は決してやましい気持ちがあるわけじゃない。ロリコンではない。ただ、少女の無垢さが好きなだけなんだあああああああああああ!!!!
    「あ、あはは。よかったら僕も手伝ってあげるからさ。またやり直せばいいさ」
    「えっ……。て、手伝う? 手伝ってくれるのっ? ほんとにっ!?」
     僕の申し出にレヴィアンは目を丸くして驚いていた。砂の城を作るだけなのに大げさだなぁ。ふふ……悪魔と言ってもやっぱりまだまだ子供じゃないか。
    「はは。実は僕も結構得意なんだよ。さぁ、2人で超大作を作ってやろうじゃないか」
     僕は微笑みながら砂場の中に入ると。
    「あ。ご、ごめんね。この砂場はもう完全に悪の結界が無効化されてしまってるから、もうここでは創ることはできないんだ……」
    「……え?」
     ここで作らないの? なんで? っていうか悪の結界ってなに?
    「ほらほら。手伝ってくれるんだったらさっさと行くぞ。この公園は天使に荒らされ尽くされたから別の場所を探さなきゃなんだぜっ」
     レヴィアンが僕の服を引っ張った。
    「や……ちょっ。意味が分からないっ。ど、どこ行くんだよっ」
    「だから作りに行くんだろ」
    「え? 作るって……だからここで作ればいいじゃん。砂場あるんだし」
    「はあ? 砂場? なに言ってるの? だから公園では駄目だって言ってるでしょ」
    「でも公園じゃないと作れないじゃん。砂のお城」
    「砂のお城……? はあ? なぜに?」
    「え? だってムゥに砂のお城を壊されたんだろ。一緒に砂遊びしようってことだろ?」
     レヴィアンの表情が固まって――そして、ブチ切れた。
    「な、なああああんでワタシがそんなガキみたいな事しなくちゃいけないんだよーーーーーーーっっっっ!!!!!!!」
    「え、ごめん……」
    「いいからついて来なさいっ」
     そう言って、レヴィアンが僕の服を引っ張って、公園から出た。
    「っていうか聞いていいかい、レヴィちゃん」
    「お前までワタシの名前略すな。ていうか、ちゃん付けるなボケ。レヴィアン様って言え」
    「それは置いといてさ、そもそもいったい僕らはなにをしに行ってるんだ?」
     てっきり砂遊びするとばかり思ってた僕はレヴィアンが意図してることは理解できない。
     早く家に帰って我がオアシス・レディバグ団に行きたいのに。
    「くっくっく……聞いて驚くなよ。人間。ワタシはこれから人が大勢集まり、なおかつワイワイガヤガヤと感情が入り乱れる場所に行く。そこでワタシは人間どもの幸福エネルギーを不幸エネルギーへと変換するのだ。こうして人間どもに負の感情を与えてダークエネルギーを集める! 貴様にもその手伝いをしてもらうぞっ!」
    「なに言ってんだお前?」
     魔法少女アニメとかに出てくる敵みたいな?
    「ふははっ。びびったかっ? だがもう断れないぞ。貴様は悪魔と契約を交わしたのだ! 一生ワタシの奴隷なんだぞっ!」
     漆黒の少女は高笑いした。やっぱり魔法少女ものの敵役だな。しかも中ボス的な。
    「どうやら貴様からは負のエネルギーを感じる。奴隷の素質も充分だっ」
    「え? 僕はこんなに清らかな心を持っているというのにっ!?」
    「それはきっと気のせいだ。いいから人が沢山集まって、賑やかなとこ教えろっ。下僕っ」
     ちっちゃい女の子がこういう高圧的な態度ってのも……可愛ええなあ。
    「え〜と……それじゃあいいところがあるよ〜。ついておいでよ〜」
     僕はほわわ〜ん、ってなってフラフラと歩き出した。
     ……はっ! ま、まさかこれも悪魔の呪いによって、僕の意思とは無関係に行動してしまっているとでも言うのかっ!? そういう訳なのだから決してロリコンではないぞ、断じて。


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