ガンプラマスター昇太郎

最終話 昇太郎の一時間戦争

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「くそっ……敵の位置が分からない。ジム、応答してくれ、ジムっ…………。こちらジム、3時の方向にザクを補足。指示を待つ」
 俺は右手にHGガンダム、左手にHGジムを持って廊下から教室の入り口をのぞき込んだ。もちろんガンダム役もジム役も俺。一人二役だ。
 そして教室の隅のほうには、右手にシャアザク、左手にザクを持った師匠が地面に伏せてぶつぶつ呟いていた。
「ふっふっふ……連邦なぞ恐るるに足らん。クラウン、援護を頼む…………。はっ、小佐!」
 声色を変えて本格的に役に入り込んでいる……さすが師匠だ。
 じりじりとガンダムとジムを教室の中へ進ませる。その途端に。
「ばらららららららららら――――――っっ!」
 師匠が操るシャアザクとザクがマシンガンを構えてこっちに撃ってきた。
「うわっ……あんな距離からだとっ……一旦ひくぞっ」
 俺はすぐにガンダムとジムを扉のかげに隠した。
 経験の違いというものを実感した。ガンプラの出来が戦力の決定的な差でないとはこういうことか……いや、ガンプラの出来も師匠の方が圧倒的に優れてるんだけど……。
 大事なのは勝ち負けでない。でも俺は……ここで負けちゃいけない気がしていた。師匠と約束したからだけじゃない。もう俺は、これ以上は負けられないんだ。
 俺は今度こそ絶対に勝つ。だから全力で戦う。これは遊びではあるけど命を賭けている。
 勝つ為に俺ができること。半端なことはできない……まともに相手をしていたらこちらに勝ち目はないだろう。だったらここは……一気に攻めるべきだ!
「いくぞジム、俺についてこい! ――おうよ、ガンダムの兄貴! おらららららあああああ〜〜〜! どどどどどどどどどど!」
 俺はガンダムとジムを手に教室にすると、2体に銃を構えさせ床の上を滑らせるように移動させた。
「ふっふっふ……特攻か。だが当たらなければどうということはない。クラウン、撃ち落とすぞ! ばばばばばばばばっ!」
 俺の行動は想定の範囲内だというのか。師匠は落ち着いて迎え撃つ。俺は弾を避けるようにしてガンダムとジムを左右ジグザグに移動させる。
「うおおおお――――っっ! 俺だって……俺だってえええええ!!!」
 俺はジムをザクのすぐ傍まで突っ込ませた。
「くうっ! こんな雑魚なんかにいいいいいいいっっっ!!!」
 師匠はザクに斧を持たせてジムへと斬りかかった。
「しまっ……っっっ!!」
 とっさにザクの斬撃をかわそうとしたが――。
「くそうっっ!」
 かわしきれずジムの左肩に直撃した。俺はジムから左腕をはずした。
「まだまだァ!!!」
 師匠は追撃の手を緩めない。近くに置いていたシャアザクを手にして、2体がかりでジムを狙おうとする。
「大丈夫か、ジム! ここは退くぞ! ――腕がっ腕がぁあああっ!」
 俺はすかさずガンダムをジムの元へ寄せて、2体を教卓の裏まで撤退させた。
「ふっふっふ。どうしたの、昇太郎。さっきまでの勢いはっ」
 師匠の挑発する声が聞こえてくる。
 ――やはり手強い。
 片腕を失ったジムにガンダム。俺は不利な状況にたたされた。だが……俺には、秘策がある。
「さっきから逃げてばかりじゃない。そっちが向かってこないならこっちから行くわよっ」
 師匠の声が近づいてくる。
 俺は素早くガンダムと片腕のジムに銃を持たせる。
 そしてさらにもう一つ――。
「覚悟しなさい昇太郎。これでおしまいよっ!」
 師匠が叫んで教卓の横に回り込んだ。
 俺は――。
「ふおおおおおっっっっ!!!!」
 右手にガンダム、左手にジム、そして――口にゴッドガンダムをくわえてシャアザクとザクに立ち向かった。
「こ、これはあなたがガンプラ大会で作ったゴッドガンダム!? い、いつの間にこんなものを……昇太郎っ!」
「ははかうはえにはふひてほいはのは」
 訳――戦う前に隠しておいたのさ。
 俺は勝つためにあらゆる手を尽くす。俺は俺のために師匠を倒す。今日、ここで。
「な、なにいってるか全然分からないのよっっっっ、昇太郎――――ーっっ!!!!」
 シャアザクとザクが俺の口にくわえられたゴッドガンダムを狙う。
 俺はすかさず、左右の手に持った2機でザクをねらい撃ちにした。
「ダダダダダダダダダダダダダッッッッッッッ――!!!!」
 左右から集中砲火を浴びたザク。ここまでやららればこの機体は。
「……しょ、小佐! 助けてください小佐ぁぁああああああ!!! ――すまないクラウン。だがこれは、決して無駄死にではないぞ…………ちゅどーんっ!」
 師匠はザクのパーツをバラバラにさせてその場に放置した。
 や、やった……1機倒したぞ……。
 俺は思わず気が緩んでしまう。
「だけどまだ勝負は終わってないわ!」
 師匠が俺の隙をついてシャアザクを後方に下げた。さすがに3対1では不利を感じたのだろう。
 よし……いけるぞっ!
「ふおおおおっっ!」
 チャンスを逃さない。俺はこのままガンダムとジムとゴッドガンダムと共に師匠の元へ突撃した。ところが――。
「昇太郎……私を甘くみるんじゃない!」
 教室の隅の机のかげでコソコソしてた師匠が、いきなり俺のすぐ目の前に飛び出した。
「やぁ、馬鹿弟子」
 師匠は不敵に笑った。
 ば、馬鹿なッッ! こんな一瞬で俺のところにくるなんて。そんな……MSがこんなに速く移動できるはずない。でも師匠はその辺りの設定やルールは遵守するはずだ。ならいったい、どんなガンプラだったらこんなめちゃくちゃな速さで……。
「ふっふっふ、昇太郎……だからお前はアホなのよ」
 もう1体隠していたのは、俺だけじゃなかった。
 師匠の手にしていたのは、俺が口にくわえているGガンダムの師匠にあたるMS……めちゃくちゃがまかり通るガンダム世界、Gガンダム作品の――マスターガンダムだった。
「そして昇太郎……とりあえずジムは破壊した。これで残りは――2機」
 マスターガンダムが構えた拳はジムの胴体を突き抜いていた――ように見えた。


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