ガンプラマスター昇太郎

第4話 昇太郎、大会に出る

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 ガンプラ大会当日。
 朝早く電車に乗って会場となるホールにたどり着いた俺は感嘆の息を漏らす。
「これ、全部参加者なのか……?」
 小学生っぽい子供から還暦を過ぎたようなお年寄りの方まで、大勢の人間が集結していた。ニッパーを左右それぞれの手に持って空を切っているやつ。ひたすらシャアの物まねをしてるやつ。アムロ永遠にを熱唱しているやつとか、なんかもうただひたすら濃かった。
 その時、俺はよく知った顔が参加者達に混ざっているのを見つけた。
 その人も俺のことに気付いたらしくこっちにやってきた。
「おお。昇太郎くん、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「班長、あなたも参加するんですか」
 その人は、俺が五十嵐邸でバイトしてた時の、合わせ目班の班長だった。
「今はもう班長じゃないよ。君と同じ、一人のガンプラ馬鹿だよ。ほら、あっちに受付があるから行ってこい。そこから先は、おれとお前はライバル同士だっ。君には感謝してるが、それとこれとは話は別だからなっ。決勝で……待ってるぞっ。はははははっ」
「あ、はい……それじゃいってきます」
 なんか性格が様変わりしていた班長に背を向けて、俺は入場口に立っている受付に参加証を貰って待合室に入った。それとほぼ同時に放送が流れた。
『ぴんぽんぱんぽん。これより、掲示板にて第一回戦の対戦表をお知らせします。すみやかに確認してください』
 というわけで俺は掲示板を確認しにいった。ていうかどこにあるんだよ、そんなの。俺、聞いてないし。
 なんとか人に尋ねたりしているうちに掲示板のある場所にたどり着いたのはいいが、その対戦表を見て俺は驚きを隠せなかった。
「まさか……そんな」
 こんな運命的なことがあるのだろうか。
 俺の一回戦の相手。それは――。
「よう、坂場ァ。テメエも不運だよなぁ。まさかいきなりオレと当たるなんてよぉ」
 と、俺の背後から声が聞こえた。
「遠慮はいらない。全力でかかってこい。お前をぶったおす!」
 俺は振り返って答えた。
 俺の対戦相手は、白城静夜だった。
「くはははっ。威勢いいねぇ。テメエがオレを倒すだって? いいぜ。ならテメエにモデラーの実力というものを見せてやるよ!」
 白城は高らかに笑いながら去っていった。
 …………ふ。ふふふ。
 俺は思わず笑みがこぼれそうになる。怖じ気ついた? いいや、違うね。俺は嬉しいんだ。まさかいきなり白城静夜と戦えるなんて。俺が白城を倒すことができれば、きっと柴島さんは俺のことを……。
 俺はもう、自分が負けることなんて考えていなかった。ただ、白城静夜を倒すことだけを考えていて……すると不意に会場中にアナウンスが鳴り響き、ガンプラ大会の開会式を告げられた。
 会場となるホールに入ると、参加者達が大勢集結していた。
 広いスペースに、長い作業台がところどころに並べられていて、その机の上には中に工具類が入っているであろう箱が点々と置かれていた。そしてホールの壁際には無数のガンプラの箱が積まれていて、また別の壁際には大型の電子レンジのような機械がズラリと並んでいた。あれは……クイックモデリングか。
 俺たち参加者はホールの中心の、拓けたスペースに固まっていた。
 すると、マイクを持った司会者らしき黒スーツの男が、俺たちの正面に設置された仮説ステージに立った。
「みなさん、こんにちわーーっ! 本日は我がブラックロード主催のガンプラ大会にお集まり頂きありがとうございますっ。ここにおられる人たちはガンプラ作りの腕に覚えがある方々だと思いますが……ここで、恐らく日本初であろう、リアルタイムでガンプラ作ってその出来を競う大会を行いたいと思いますッッ! なぜそんなことが可能になったかと申しますと、みなさんのご存じの通り我が社がもてる限りの技術を駆使して開発したクイックモデリングという……」
「うるせー! いいから始めろおおおお!!!」
「うおおおおーーーーー! プラモデルを触らせろーーーーーっっっっっっ」
「が、ガンプラ……ガンプラはどこだぁぁぁ……ガンプラぁぁあ……」
 ガンプラが好きな人っていうのは、みんなこんな感じなのか……? 会場内に怒号が響きわたっているよ。気持ちで気圧されているよ……。ガンプラ中毒者がいるよ。
「わ、分かりました。分かりましたから落ち着いて。暴動は起こさないで。は、はいっ。では時間もおしていますからそれではさっそく第一回戦を始めさせて頂きますね〜。参加者のみなさんは対戦表の通りに移動してくださいっっ」
 俺は掲示板に書かれていた番号のテーブルに向かった。
「よう」
 テーブルを挟んだ向かい側。くくく、と笑う白城がいた。
「……」
 俺は白城をまっすぐ睨みつける。
「さぁ! 出場者のみなさん! 準備はいいですかーーーっっ!!! ルールは簡単! 制限時間3時間の間に、向こうの壁際に積まれている好きなガンプラを選んで作ってもらいます! あとはどう作ってもらっても自由! テーブルに積まれた工具キットを使うもよし、持ち込んだ自分オリジナルの道具を使うもよし、もちろん今回特別に用意したクイックモデリングを使っても構いません! 完成したガンプラの出来を審査員が判定してどちらが次の勝負に進めるかを選んでもらいます! それでは準備はいいですかっ!?」
 ホールに散らばる参加者達の顔つきが一斉に変わった。
 そして――。
「一回戦っ! レディー……ファイトオオオオオオオオオオ!!!!!」
 ガンプラ大会第一回戦が始まった。


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