アクター×アウター 〜演じる彼女と目立たぬ彼女〜

―― 0の事象 ――

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 
 ワタシは知っている――世界には中心があると。

 この世界は劇場だ。だが舞台の上で劇を演じている者は誰もいない。
 しかし、まれにその劇を演じようとする者がいる。意識的・無意識的に関わらず、物語を展開させていく存在がいる。
 物語は、その劇を始めた主人公を中心として連鎖的に次々と拡大し、感染していく。
 例えばそこで殺人事件が発生するとしよう。
 勿論、この事件を引き起こした者は誰でもない、犯人自身ということになる。
 だけど物語の法則に則って言えば、犯人はただ演劇のシナリオに利用されただけの被害者でしかないと言える。
 ――そしてワタシは知ってしまった。
 ワタシの全てを奪ったあの出来事は、誰のせいでもなかった。犯人はどこにもいなかった。
 敢えて言うのなら、あの時も、たった1人の少女によるものであった。
 ――世界の中心、物語の主人公。
 その者の都合によって、周囲の世界は動いていく。否応なく突き動かされてしまう。
 本人にその気がなくとも。物語の展開を望んでいなくとも。物語は、まるで逃れられない運命のように回っていく。
 それを回避する手段はただ1つ。
 そう、簡単なことだ。
 始めから物語の中に入らなければいいのだ。
 神の視点に立って物語に干渉すればいいのだ。無責任な行動で誰かを傷つける事もないし、言葉1つで悲劇へと繋がる連鎖は発生しない。
 それはなんて気が楽なのだろう。それはなんて気持ちのいい逃避だろう。
 だからワタシは――常に外側にあり続けよう。


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