アクター×アウター 〜演じる彼女と目立たぬ彼女〜

第4章 首絞め

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幕間劇 C

 
 西澤アンナはプライドの高い女だ。
 彼女は欲しいものは全て手に入れたいと思っているし、欲しいものは何でも手に入ると思っていた。
 彼女はかつて、瀬能芹奈と友達になろうと試みた時期があった。
 瀬能芹奈は入学した当初からどこか浮いていて、クラスから孤立気味だった。
 だからアンナは芹奈に声をかけた。
 しかし芹奈は、素っ気ない笑顔で軽くアンナをあしらった。それでもアンナは諦めなかった。アンナは欲しいものは手に入れないと気が済まないのだ。
 だからアンナは何度も芹奈と仲良くしようと努力した。それでも結果は同じだった。
 次第に芹奈は、クラスからますます孤立していき、誰からも話されなくなっていった。
 でもその頃から不思議な事に、生徒会役員が芹奈を訪ねて来るようになった。
 芹奈は彼らと共にどこかに行くことがしばしばあった。
 生徒会メンバーといえば、アンナからしてみれば雲の上の存在だった。
 中等部に入った頃から憧れていた奏上大賀に、クラスの誰とも話そうとしない芹奈が仲良くしているのが許せなかった。
 西澤アンナの好意が、憎しみに変わったのはそれからだった――。

「……瀬能芹奈。なぜ奏上さまはあんな女なんかに入れ込んでいるのかしら」
 辺りが暗くなり始めた頃。帰路を急いでいる西澤アンナは、ふと瀬能芹奈の事を考えた。
 学校帰り、友達とのショッピングですっかり遅くなった彼女は、近道となる遊歩道を早足で歩いているところだった。
 近頃町には、夜になると無差別に首を絞める怪物が現れると言われている。だから日が完全に沈む前に家に帰ろうと、アンナは人通りの少ない、周りを草木で覆われた小さな湖がある遊歩道を急ぎ足で進んでいるのだ。
 だがそれは――首絞めジャックにとっては格好の餌食だった。
 西澤アンナが歩いていると、突如草むらから何かが出てくるのが見えて――その瞬間、いきなりそれがアンナのそばまで飛び出してきて、そして首に激痛が走った。
「ッ!? うぅっ……ぐっ……は、放し……」
 もの凄い力だった。それは目深にフードを被った人間だった。どうやらアンナの首を絞めているようだった。
 そこでアンナはようやく理解した。この人物こそが町を騒がせている首絞めジャックだと。
 必死の抵抗もものともせず、アンナの首を絞める怪物は一切の力も抜かずに、ただ首を絞めていた。
 アンナの意識が次第に薄れゆく中、彼女は怪物の正体を見ようと力を振り絞って、頭に被るフードをとった。
 その時――彼女は見た。
「あ、あなたは……そんな……せ、せいと――か……」
 怪物の正体を見たアンナは、驚きで抵抗する意思をなくした。
 やがてアンナの首から怪物の手が離れて、彼女の体は地面に倒れた。
 アンナは力なく地面をかきむしって――そこで、西澤アンナの意識は途切れた。
 かくして連続首絞め事件、今晩の被害者は彼女となった。
 そして彼女が最後の被害者であり――首絞めジャック最後の犯行である。


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