超中二病(スーパージュブナイル)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

プロローグ

 
 僕はこの世界に馴染めない――。

 世界の仕組みが紐解かれ、世の中はパラダイムシフトを迎えることとなって間もない現在。世界はまさに混乱期にあった。
 俗に『虚構革命』と呼ばれるこの現象は、一人の天才によって引き起こされたと言われている……その者はあるいは神と呼ばれている。
『革命』がなんなのか簡単に言うならば、この世界を構成する要素が全て解明されて世界自体が物語に置換されたということなのだ。つまり世界そのものが虚構。それは映画、ドラマ、小説、漫画、アニメ、その他あらゆるエンターテインメントそのものの世界へと現実がアセンションしたということ……あるいはディセンション。
 具体的に何がどう変わったのかと聞かれれば、何も変わったところはないと言うよりない。敢えて言うなら、前より少し刺激が増えたとしか言いようがない。そして日常性生活全てがやたらと胡散臭くなったと……。
 革命前と革命後。何も変わっていなさそうで何もかも変わったような世界。けれど具体的に言えと言われれば、やっぱり何も変わっていないと言うしかない、そんな世界。
 かつて父親が言った事を覚えている。
『たとえどんな世界であろうと環境を恨まず、周囲を妬むな。その分だけ後悔する。世界を恨む暇があるなら、何でもいい、自分が一生懸命になれる何かに全力で打ち込め。そしたらきっとそれがいつか自分の宝になる日がくるさ』
 ……だからといってどうという事もない。ただ何となく覚えているだけ。だって僕は、この世界で何をどう頑張ればいいかなんて何一つ分からないんだし、そんなことは馬鹿げていると思っているから。それに僕は……いや、何でもない。
 僕のように新たな世界に対して否定的な人間も多く、争いは絶えない。けれど圧倒的なまでの速度で世界は確実に変容している。これが進化と言えるかどうかは分からないが、いずれは完全に受け入れられるだろう。時代の変化とは、世の中とはそういうものだ。誰にも止められない。今の時代は丁度そのターニングポイントなのだ。ただ、それがあまりに劇的すぎる為に戸惑う人が多いだけなのだ。
 けれど、しかし――。
 それでも僕は、この世界に馴染めない。


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