超中二病(スーパージュブナイル)

第4章 越えて世界

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

右城條区の追憶

 
 ――それはいつの事だったか。夢とも幻ともいえる遠い遠い記憶。

「ねぇ。お兄ちゃん、だ〜れ?」
「えっ? ぼく?」
「うん。ここはわたしのお家なんだよ……でもつい最近なったばっかりなんだけどね」
「ぼくも……この家の人間だったんだ。覚えてないけど、お父様から聞いたんだ」
「おとうさま……? わたしには、おとうさまいないの……」
「いない?」
「うん。わたしはいらない子って言われたの、でも最近になってやっぱりわたしが必要だって言われてここにきたの。でも今は必要だけどほんとはわたし、いらない子なの。用事がなくなったら、またどこかにいっちゃうの」
「……そんなことないよ。いらない子はぼくの方さ。実はね、ぼくは今日たまたまこの家に来ただけでさ、ここはぼくの家だけどぼくの家じゃないんだ」
「どういうこと?」
「ぼくはお父様に捨てられたんだ。今日は話があるとかで義理の親とこの家に来たんだ。だから安心して、ここは君の家だよ。いらない子はぼくの方なんだよ」
「……ううん。だったらお兄ちゃんもかぞくだよ」
「え……」
「だってお兄ちゃんもここのお家の子だったんでしょ? ならわたしたちはかぞくなの」
「でも……ぼくは捨てられたんだ」
「わたしはお兄ちゃんをすてていないよ。おとうさまがすててもわたしはすてないよ。だってそれがかぞくで、愛なんだよ」
「……」
「だから、わたしとおにいちゃんはかぞく」
「……ねえ、きみは……どうしてここに来たの?」
「う〜ん。えっとね、わたしには特別なちからがあるんだって。よくわからないんだけど、わたしのちからがあれば、せかいを救えるんだって。必要なのはわたしじゃなくて、わたしのちからなんだって」
「……力、か。……ぼくは力がないから用済みだってお父様から言われたんだ……ぼくは、こんなよく分からない力なんて嫌いだ」
「そう……? わたしは好きかもしれないよ」
「え? なんで? きみだって力のあるなしで必要とかそうじゃないとか決められてるじゃないか」
「だって、わたしとお兄ちゃんは力のあるなしでかぞくになれたんだよ。力のおかげで出会えたんだよ。だからわたしの力はせかいを救えるかもしれないっておもえるんだよ。だからこれも愛なんだ」
「……きみ、名前はなんていうの?」
「うん? わたしはね――ささなみ。きれいでしょ? おかあさんが付けてくれたの。しずかできよらかでおだやかでへいわな名前なんだよ」
「そう……ささなみ、ちゃん。ぼくは……じょうくって名前なんだ」
「じょうく……? あははっ。変ななまえ〜」
「ははっ、そうだね。変な名前だね」
「でも、とってもかっこいいよっ。じょうくお兄ちゃん、よろしくね。わたしたち今日からきょうだいだねっ」
「うん。そうだね」
「きょうだいは助け合わなきゃいけないんだよ。だからお兄ちゃんが困ってたらいつでもわたしが助けてあげるからね。だから元気だしてお兄ちゃん」
「……え? ぼく元気ないように見える?」
「なんだかとってもつらそうな顔してたよ。わたしがなんでもするから元気だして」
「ありがとう……僕は大丈夫だよ。笹波ちゃんのおかげで勇気づけられたよ」
「ほんとに? よかった。お兄ちゃんげんきになった」
「ぼくも、ぼくもささなみちゃんが困った時はいつでも駆けつけて助ける。約束する。だってぼく達は家族で、愛で繋がってるからね」
「それじゃあ……お兄ちゃん。わたし忘れないからね、きっと」
「うん」
「だから、また会えるよね、きっと」
「うん」
「わたしたちはかぞくだから……だからこれはさようならじゃないよ、またね……お兄ちゃん」
「うん……ありがとう、ささなみちゃん。ぼくは」

 いつかきっと、君に愛を届けに行くから――。


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