僕の邪気眼がハーレムを形成する!
第4章 ハーレム系主人公
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そんなこんなで女の子3人を引き連れて僕は自宅に帰ってきた。
「珠洲ーっ。みんなを連れて来たぞーっ」
自分ん家に入る前に珠洲の部屋に向かって大声で呼び掛ける。そして僕は自宅へ帰って、そのまま自分の部屋に。
「こ、ここが……柳木くんの部屋。わぁ……」
一種畏敬にも似た感情を抱いているような顔になって、弥生ちゃんは部屋を見渡した。
「ま、そのへんに座っていいよ」
僕は床に散らかっていた本などを片付けながら言う。
それでみんなが各々腰を下ろし始めると、そこでようやく珠洲が遅れてやってきた。
「わぁ、なんだか久しぶりの九郎の部屋だぁ」
なぜかちょっと嬉しそうな顔をしている。
すると、他の3人の女の子達の表情が一様に曇った。……そうか。魅了状態の彼女達は、僕に身近な存在の珠洲に嫉妬してるんだな。珠洲め……余計な一言を。
「ああ、それはいいけど僕の部屋に来たって本当に何もないぞ。これからどうするんだ」
僕はわざとぶっきらぼうに言い放った。
ていうかさっきからみんなに部屋中をじろじろ見られて僕はちょっと恥ずかしい。
すると、一ノ宮さんがとろけた顔で頬に手を添えて言った。
「そんな事ないですよぉ〜。九郎くんの部屋にいるだけで、とってもとっても楽しいですぅ〜。九郎くんについてまた1つ理解を深めることができましたぁ」
恐るべし、魅了! 一ノ宮さんが僕にデレデレ状態!
「え……一ノ宮さん……いったいどうしちゃったの……?」
普段の僕に対する態度とまるっきり別人になった一ノ宮さんに、珠洲が口を半開きにして唖然としていた。
「いやぁ……珠洲。ちょっと一ノ宮さんの様子が変なのには事情があるんだよ。ほら、彼女って結構変わったトコあるだろ? だからきっとこれもそんな感じのあれなんだよ。僕に対してちょっと興味とというか、好意を持っちゃったみたいなんだっ!」
言い訳にならない言い訳で僕は誤魔化そうと試みるが……珠洲は意外な反応を示した。
「なっ……で、でも、私の方が九郎に関して理解は深いんだからねっ! 私は九郎のエキスパートなんだよっ!」
「は、はいっ!?」
なぜか珠洲がムキになって一ノ宮さんに対抗し始めた。な……なんで!? 珠洲は邪気眼効かないはずだよね? え、珠洲にもかかってたっけ?
ちょっと理解不能な展開に僕が混乱していると、火種は更に大きくなっていく。
「…時間なんて関係ない。大事なのは想い」
横から此花さんが挑発するように目を細めて妖艶に笑った。
しかも、なんと彼女は僕の方ににすり寄って来ているしっ。
「あ、いや。ちょっと待って、此花さん! そ、それは駄目だよっ。紳士協定に反するっ」
此花さんに触れまいと僕は思いっきり後退する。が――すぐに部屋の壁に背中がぶち当たって行き場を失った。
「どうしたの、柳木君…もしかして、私の事が嫌い?」
僕にゆっくり忍び寄る此花さん。いつも無表情で何を考えてるか分からない顔をしているはずの此花さんが、指をくわえてすごく寂しそうな眼差しを僕に向けている。
「え、えっと……僕は――」
「つまり柳木くんはボクに気があるから……って思ってもいいって事かい?」
すぐ隣からささやくようなハスキーな声。五行弥生ちゃん。
「や、弥生ちゃん。ちょっ、それは待って! 思ってもいいけど、いいんだけど、今は思っちゃ駄目っ。この状況では駄目っ!」
僕は壁に沿って弥生ちゃんからも距離をとる。
「なに言ってるんですかぁ、みなさん。九郎くんが選ぶのは……わたしなんですよぉ」
「ごめんねっ、一ノ宮さん! 君の事はとても素敵だと思うけど……特にその胸とか素敵だと思うけど。ちょっと離れていて! ちょっと服をはだけさせ胸を強調させて僕に近寄るのは今はやめて!」
どんどん逃げ場がなくなる僕。なんとかみんなの隙間をぬぐって後ずさりすると――。
「うわっ!?」
背中に何か柔らかいものがぶつかる感触があって――直後、僕はバランスを崩し後ろ向けに倒れそうになる。
「きゃあっ」
背中にぶつかった何者かも声をあげた。
強制解除――? 僕はぶつかったのが何なのか確認したい事もあって、倒れていく最中、なんとか体の向きを変えて。すると下にはベッドが見えて。
「おわぁっ!」
直後。僕と、その何かは――ベッドの上に倒れ込んだ。
「……う、う〜ん。いたたた……くない?」
ベッドの上に倒れたからか、倒れた衝撃を全く感じなかったのだが、それはなぜだろうと思っていると。
「……うん? むにゅ?」
両手にやわらかい感触があった。当然、僕はなんだろうと視線を手に移す――と。
「九郎……私を、やっぱり私を選んでくれたんだね。でも、ちょっと強引……かな?」
僕の下にはモジモジと顔を仄かに紅潮させた珠洲がいた。
「え、あれ、珠洲……え」
僕はこの状況の理解に苦しむが、うん。どうやら完全に僕が珠洲を押し倒したみたいな状況になっている。なんか急に目を閉じて唇を突き出してきた。
「わわ……珠洲っ。ごめんっ! これはちょっとしたアクシデントだからっ。ていうか何を待ってるの!? ないよ! 特になにもないからね!?」
僕はパニックになりながら必死で言い訳。その間もムニムニと手に柔らかい感触が伝わる。
「分かってるよ、九郎。恥ずかしいから素直になれないんだね? そうだよね、みんな見てるもんね……だから、今はどいてくれると嬉しいな? みんなが嫉妬すると思うから……」
僕の下で無防備な珠洲が顔を横に向けた。その先には3人の少女達。そして珠洲の顔は、どこか勝ち誇ったような表情をしているような気がした。それより僕はいつまで乗っている。
「ごめんっ。すぐ離れるから! ていうかさっきからリアクションなんか間違ってないっ!?」
僕は珠洲の体から飛び跳ねながらツッコむ。普通ならここ、怒るとこだよねっ?
「……私、もう九郎のものにされちゃった」
「されてないよっ! 変な言い方やめてっ! これはアクシデントだからねっ!? 僕は珠洲になにもしてないからね!? なっ、みんななら分かってくれるよねっ!?」
部屋には確かに冷房が効いているはずなのに、さっきから僕は汗が止まらない。
「く…悔しい。引きこもり如きに劣るとはっ。キィ〜っ」
「此花さんハンカチを噛みしめながらすっごい怨嗟の目で僕を睨みつけてらっしゃる!! キャラめっさ変わってますよ!」
あと、いつの間に取りだしたんだハンカチ!
「や……柳木くんならボクを選んでくれるって信じてたのに。そう誓い合ったはずなのに……っ。男の子でも構わないさってさぁ!」
「いつ誓い合ったーーーーーーーーっっっっ!? ないない! 男の子ないないっ!」
ていうかその意味深な発言は何!? え、君もしかして男……いやいやいやいやっ。こんな可愛い顔した子が男のはずがない!
「ボーイズラブ…男の世界へ」
「そして此花さん! 僕と弥生ちゃんを見てなんか変な世界に入ってらっしゃるよ! いや、よく分からないけど! もう人間関係が複雑すぎて全然分かんないけど!」
はっ……そういえば一ノ宮さんが随分大人しいぞっ! 意外と性格悪い一ノ宮さんこそここは注意すべき存在っ!
その時、ゾクリ――と。
僕は危険を感じて素早く振り返ったら――そこにはなんと、私服の白いワンピースを半分脱ぎかけている一ノ宮さんがいた。
「な、何をやっとるんだ、あんたはーーーーーーーっっっっ!?」
白い下着に、モチモチと柔らかそうな白い肌。
「珠洲ちゃんに先を越されましたから……よし、こうなったら無理にでも襲って既成事実をつくりあげるしかありません! と思いましてっ」
一ノ宮さんがナイスアイデア、と両手を打って頷いた。
「全然ナイスじゃねぇよ! それどこのフランス書院文庫だよ!」
「…座布団1枚っ」
此花さんが感心したように声をあげた。
「いらねーよ! 誰も上手いこと言ってねーよ!」
「それじゃあ柳木くんは何が言いたいのさっ。ボク達をその気にさせるだけさせといてさっ」
と、今度は弥生ちゃんが僕に批難するような言葉を投げかけてきた。
う……確かにその気にさせたのは僕の邪気眼だから、そこは反論できない。
「あ、あはははー。いやぁ。確かに僕もちょっと曖昧な態度をとってたなーとは思ってたんだけどねー。でもね、みんなを避けてるわけじゃないよっ? ただちょっとお触りは厳禁だって言いたいんだっ」
僕ははぐらかしながら雲行きが怪しくなってきたのを感じる。なんでいつの間に僕が責められる展開にいっちゃったわけなのさっ!?
「九郎……だったらはっきり言ってやってよ。九郎の気持ちを。九郎はいったい誰と添い遂げたいのかを」
ベッドの上にチョコナンと座る珠洲が、力強い意思を秘めた目をして言った。
誰と添い遂げるか……だって? そんな馬鹿な。僕が誰か1人を選ぶなんてそんな事あり得ない。僕は全ての人間を虜にできる邪気眼を手に入れたんだぞ……っ。なのにその力を利用しない生き方なんてできるわけないだろっ。
僕が求めるのはハーレムだ。僕はみんなから愛されて、みんなを愛したい。魅了という力を得たという事は――つまりそういう生き方なんだ。
だから僕は勇気を振り絞って答える。
「みんな、聞いてくれ。僕は誰か1人を選ぶなんてそんな事できない。誰かを選んで他のみんなを傷つけたくないんだっ。みんな……分かってくれっ。そうだ……だからここはいっそ、僕はみんなのものってことにしないか? つまり一夫多妻制みたいなものなんだけど……」
まるで悲劇のヒーローみたいな感じで僕はすまなさそうな表情を作って答えた。どうだ? この答えならむしろ僕の株も上がったんじゃね?
「な……な……九郎……それはいくらなんでも最低だよ……クズそのものだよ」
あれ? 珠洲はお気に召さなかったみたい。
よく見れば他のみんなも同じだったみたいで、みんながみんな僕を軽蔑するかのような目で見ている。
「ボクも加瀬川さんと同意見だって言いたいけど……でもなんで……それなのにこの熱い胸のときめきは止まらない……」
ふっ……ふふ、弥生ちゃん。君には僕の魅了の呪縛から逃げられないようだな。理性ではなく本能が僕を求めているのだよっ!
「不本意ながら…私も同じ。何故…私は恋愛をする側の立場じゃない。観察する側の人間でいるのが好きなのに…」
無駄なんだよ、此花さん。個人の趣味な嗜好なんて、僕の邪気眼の前じゃ簡単にねじ曲げれられるんだよ。
「わたしも……悔しいですぅ……こんな最低のクズなのに……それなのに……らめぇえええ」
一ノ宮さん。君は1人で何を言ってるんだい?
にしても、僕はみんなの言う通り本当に最低だ。邪気眼が発動中でもそう思われる位に。
……確かにそれは否定できないけど、でもそれは覚悟のうえだ。
「お、おかしいよみんな……ど、どうしちゃたのよ」
さすがに3人の異常事態に気が付いたらしい珠洲は戸惑いを隠せないよう。
「さぁね。僕には分からないけど……それは多分、僕の隠された魅力に魅入られたんじゃないのか? なぁ、みんな。そんなわけだから僕は君達の中の誰かを選べないんだ。だから今は落ち着いて少し離れてくれないか?」
クズだと思うのなら好きなだけ思えばいい。僕は開き直って尊大な態度をとる。
王である僕が下手に出る必要なんてないのだ。他人にどう思われていようと、僕の力はそれを無下にしてしまうんだ。だったらそんなこと気にする意味はない。
僕はもう、一般ピープルの感情なんていうものは捨てた。
僕の言葉に対して、とろけた瞳で僕を蔑む少女達。
その中で唯1人。
「く、九郎……」
珠洲が……珠洲だけが、とても悲しそうな目をしていた。
「さぁ、そういうわけだから一ノ宮さん。君も服装を正すんだ。部屋にはクーラーが効いてるからそのままの格好だと風邪をひくよ?」
僕は珠洲と顔を合わせ続けるのがなんだか躊躇われて、一ノ宮さんに優しく忠告した。
しかし、一ノ宮さんは。
「そんなぁ……九郎くんは女の子に恥をかかせるの……? わたし、そんなの悲しいよぉ」
まるで駄々をこねる子供のように、一ノ宮さんは懇願するように両手を合わせた。
てか、自分で勝手に脱いでおいてよく言うよ。
「で、でも僕は君達の中の誰かを選べないんだよっ? そ、それはちょっと困ることだよっ」
この流れは……またもやピンチ到来なのか?
「そ、そうだ。こ、此花さんはどう思う? こんな抜け駆けみたいな真似は――って、うええええっっ!?」
他の人の意見を聞こうと、とりあえず一ノ宮さんを見ると――僕はびっくり仰天。
「だったら今…選べばいいだけよ」
そう言って此花さんは、服のボタンを上から1つずつ外していき。
「…ご開帳」
ペランと、なんと此花さんまでもがゴスロリ風の服を脱ぎ、上半身ブラ一枚の姿になった。
僕はただ愕然として地面に落ちるシャツを見守ることしかできなくて……チラリと視線を此花さんに向ける。
「…じろじろ見られたらさすがに照れる」
無表情のままだけど、その頬は微かに紅くなっていて、可愛らしかった。細くてスレンダーな体。でも肌はスベスベしていそうな、とても綺麗なまっ白な色。
僕はこの、幸せなのかピンチなのか分からない事態に戸惑っていると、弥生ちゃんまでもが。
「ぼ……ボクも……ボクだって」
なんか対抗意識を燃やした弥生ちゃんが、羽織っていたカーディガンを脱ぎ、そしてシャツに手をつけて……徐々に脱いでいく。腰のくびれが見えて、へそが見えて、そして胸の辺りまできて〜〜〜……。
「だ、駄目っ。こ……これ以上はできないっ」
弥生ちゃんは脱ぎかけた服をささっと戻した。
……ちっ、脱がないのかよ。不覚にもちょっとガッカリしたけど、まぁ綺麗なおへそを見ることができただけでラッキーだ。って、そうじゃねえ!
「そうだよ! こんな事おかしいんだって! 弥生ちゃんの選択は正しいんだよ!? この2人が異常なんだよ!? なぁ、珠洲っ? ……って、珠洲ぅううう!????」
珠洲の方を振り向いた僕は更なる衝撃を味わった。
「く、九郎は誰にも渡さないんだからっ……わ、私が1番九郎のことを分かってるんだからっ。こ、これくらいどうってこと……ないもんっ」
珠洲が顔を赤らめながら、着ていたブラウスを脱ぎ、Tシャツを脱ぎ、そしてジーパンのチャックを開けてズボンも脱いだ。
「珠洲、お前なにやってんだよ! 服着ろって、ばかーっ!」
僕はとっさに手のひらを両目に当てて珠洲を見ないようにしようとしたけど……ついつい指の隙間から珠洲を覗き込んでしまう。
まだまだ子供だって思ってたけど、出るとこは出ていて引っ込むとこは引っ込んでる、健康そうな体。うん……よかった。僕は安心したよ、珠洲。……って、いや。なんで僕はしんみりしてるんだよ!
「みんなちょっとおかしいよっ!? こんなことしても何もならないよっ!?」
僕はずるずる後ずさりして、部屋の隅に追い詰められていく。
「大丈夫…私が忘れられない夜にする」
上半身下着姿の此花さんが僕に近寄って来る。いや、今は結構です!
「誰がいいのか比べてみよ? 九郎くんっ」
この状況自体を楽しんでるようにも見える一ノ宮さんが、半裸で元気よくやってくる。
「ボクだって負けられないよ……ボクは自分の気持ちに正直になる」
弥生ちゃんがみんなに負けじと僕に襲いかかる。
「ひ、ひぃいい……た、助けて。誰か……」
「大丈夫だよ、九郎。九郎は私が守るから。九郎は私のだからっ」
下着姿の珠洲もやってくる。そもそも邪気眼のかかってないお前がなんで一緒にやってるのか全く理解に苦しむんだが……とにかくピンチ。触れられたら最期だ。
「み、みんな……駄目だよ。僕に触っちゃ危ないよ。僕、なにするか分からないよ? 君達を傷つけることになるかもしれないよ。 え? いいの? 僕になら何をされても構わないって……いやっ、もっと自分を大切にしよっ? 人を愛するにはまず自分だよ? って、みんな話聞いてる? ち……近いってっ。駄目だ、もう……もう……わ、うわあああああ!!!!」
4人の少女が同時に、僕の体に手を伸ばして――そして触れた。
次の瞬間――魔法は解けた。
「…えっ?」
「ふわぁい?」
「……あ、れ? ボクはいったい」
此花さんと、一ノ宮さんと、弥生ちゃんが、ピタリと動きを止めて辺りを確認し始める。
「え……どうしちゃったの、みんな?」
1人、珠洲だけが空気の変化に取り残されたように戸惑っている。
――僕にとって最悪の事態が訪れた。
「え、えーと……それじゃみんな、とりあえずは服……着る?」
もしかしたらこのまま受け流されるかと思って、僕は無邪気な笑顔で言ってみたら。
此花さんと、一ノ宮さんと、弥生ちゃんの、僕を見る表情がみるみる曇っていって。
「…死刑」
「お仕置きの時間です」
「柳木くん……覚悟はいい?」
やっぱり駄目でした。みんな自分のみだらな姿を顧みらず、なによりもまず僕への憎しみの心で一杯のご様子。今日のはいつもに比べてペナルティのマイナス感情を多く感じる。
「み、みんな待って。落ち着こう! ほら、あれだ……す、珠洲も何とか言ってくれ、僕を助けてぇええ!」
「なんだか分からないけど、九郎……ご愁傷様」
「見捨てられたっ! ひ、ひぃいいいい。みんなごめんよっ。僕が、僕が悪かった! 調子に乗りすぎてましたっ! ホントは僕、ちょっと浮かれていただけなんだっ。女子が4人も僕の部屋に来るってなったら、嫌でもテンション上がるだろ? それと同じなんだよっ! だから僕を許そうよ! だから此花さん、そんな物騒なしまって! 弥生ちゃんは僕の腕をとって後ろに回してるけど、なにこれ関節? やめよっ、関節技は痛いからやめよっ。一ノ宮さんのそれは完全に凶器だよね? 鈍器だよね? 一応分かってると思うけど死ぬよ? これ当たったら僕死んじゃうよ? ねぇみんな! ちょっと一回深呼吸しよ! そして僕を許しておくれ、もうしませんからもうああああああああああっっっっ!!!!!!!! いだいいいいいあああああ!!!! ぜ、全部がぁああああっ、全部が痛いいいいいいい!!!!!!」
こうして僕は、此花さんと一ノ宮さんと弥生ちゃんから制裁を受けることになった。
ああ……僕の邪気眼の最大のデメリット。僕はいつもこれで失敗してしまう。
――そして僕は、今回失ったものがとても大きなものだったのだと、この後すぐ気付かされる事になる。