アンノウン神話体系

終章 覚醒

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2

 
「はぁ……ハァ……はぁッ」
 なんとか地上に戻ってこられた久遠とアノンとグレイ。
 廃工場から出た瞬間に建物は轟音を立てて崩れ去り、その風圧や砂塵から逃げるように走り、3人は地面に座り込んで息を荒く乱していた。
「――レが悪魔のヤローにつけた魔術の痕跡からして……奴はあっちに行ったみてぇだ」
 しばらくお互いの情報を交換するなどして落ち着いた後、グレイがある方角を指さした。
 そこは久遠達がこの場所に来る為に通ってきた道で……そこは町の方に続く、周りを林で囲まれた広くて長い一本道だった。
「――っずいな……」
 グレイは表情を曇らせて道の先を睨み続けていた。
「まずいって何だ? あっちに何かあるのか? あっちは町の方角だけど」
「――れがまずいって言ってんだよ。いいか、奴を絶対に町の中に入れちゃいけねぇ……奴はいま何をするか分からねぇ状態だ。それこそ自分の正体なんて隠す必要もないくらいに……」
 意味深げに語るグレイだが、久遠には何を言ってるかピンとこない。しかし、アノンはみるみる内に表情を強張らせて、
「しまったっ! このままだと――この町が滅ぼされる事になるぞっ……」
「な、なんだってっ!? どうして!?」
 青ざめるアノンに久遠はその真意を求める。
 しかしアノンは震えたまま答えようとはしない。いや、答えられない。
「――れは……悪魔が世界の理をねじ曲げようとしているからだ」
 アノンに代わって、グレイが口を開いた。
「世界の理を……」
 たびたび魔術師達の口から出てくる言葉。それは世界が意思を持っていて、それにそぐわない者を排除しようとする現象。
「――ぁあ、もし奴が町に行き暴れることになれば、恐らく多くの者が悪魔の存在を知る事になるだろう。ならアカシャの意向が見逃さない。恐らく悪魔に死が訪れるのは確実だが……同時に町の住人に待っているのは口封じだろう……。いくらこの町が特殊な場だからといって、悪魔を知られるのはまずいんだ。それはまずい……まずすぎるぜ」
 グレイは焦点の定まらない瞳で独り言を呟くように語る。
「――かも、凍亞の話によるとこの町にはいま、天使まで来ているらしい。なんて準備がいいんだ。これも全てシナリオ通りなのか……奴を止めないと天界が『ハルマゲドン』を発動させる事態になるかもしれねぇ。それが世界の整合性を保つ展開だと言うなら……この町はおしまいだ」
 おしまい。久遠は遠くなりそうな意識の中で思った。これが、これこそが四宮烏子の言っていた町の滅びなのだ。彼女の予言は奇しくも、久遠達が悪魔を追い詰めた事によって実現しようとしている。やはり中心にいたのは久遠だった。何もできないくせに彼が破滅を導いた。
「……っ」
 久遠は力尽きた。絶望に身を任せた。違う世界に首を突っ込んだ代償を理解した。
「何をしている。さっさと立て、九縁」
 ――と。気が付けば、久遠がうなだれている隣でアノンが立ち上がっていた。
「そんな顔をするな、九縁。まだ諦めるには早いだろ……安心しろ、ワタシは神なのだ。神には不可能な事はない。世界の法則だってねじまげてやるよ」
 久遠が見上げる少女は、金色の髪を揺らして微笑んでいた。その顔を見ていたら、久遠は自分の内から勇気が沸いてくるような気がして――立ち上がった。
「あいつも深傷を負っているはずだから走ればまだ追いつけるかも……行こう」
 運命は変えられる。世界の意思なんて関係ない。ただ平和な日常を取り戻したい。それだけだった。眞由那と穏やかな日常に戻りたい。学校にも行かせよう。遅れていた勉強も自分が教えてやろう。そしてもっと外の世界に楽しみを見いださせてやろう。一緒にいろいろなところに行ってやろう。だからその為には。
 久遠はアノンの手をとって、林に囲まれた一本道へ走っていった。

 両脇に街灯が立つ、レンガ造りの真っ直ぐな道をひたすら走る久遠とアノン。途中、アノンの足取りがおぼつかなくなったりしたが、その度に久遠は彼女を介抱し、またすぐに走り出すというのを続けていた。
 もしかしたらグラットンはもう町に辿り着いているかもしれない。そんな事を考えながら進んでいると、2人は信じられないものを発見する。
「ちょっと待って、九縁……あれは、あれはなんだろう」
 手を繋いで走るアノンが、道に何かが落ちているのを見つけた。久遠もすぐに気付く。
 大きくて黒い物体が道の真ん中に転がっていた。夜の暗闇でそれが何なのかは分からない。ただ、廃工場跡に行くときにはあんなもの見かけなかった。
 久遠とアノンが警戒しながら近づく。その物体の周りには、何やら液体が溢れ出ている。
 その物体は――。
「あ、悪魔だ……な、なんで……」
「――死んでいる」
 悪魔・グラットンの死体だった。
 倒すべき者は既にこときれていた。勿論だがその体はピクリとも動かない。なぜ? 誰がやったのだ? 2人はただ茫然と立ち尽くしていると。
「ああ〜、その悪魔はわたくしが退治しましたぁ」
 グラットンの死体を見下ろす2人の背後から、酷く場違いに穏やかな声が聞こえた。
「「……っっ」」
 久遠とアノンがほぼ同時に振り返ると、
「驚く事ないですよ〜。もう一件落着なんですからねぇ」
 嘆きの天使・クライエルがいた。闇夜の中でその姿はやけに目立っている。
 アノンが険しい表情を天使に向けた。
「これは……お前がやったのか?」
「ええ、言った通りですよ。だってわたくしはグラットンを倒す為にこの町に来たのですから」
「ならもうここには用がないはずだ。さっさと天界に帰るのだ、天使よ」
「いえ〜、そうしたいのは山々なんですが、もう一つ仕事が残ってまして……久遠さんに流れる悪魔の血を浄化する必要があるでしょう? 少しお付き合い頂いてよろしいですかぁ」
 クライエルはヘラヘラ薄笑いを浮かべて久遠の元に寄ってくる。
 久遠はクライエルに対して怯んでいたが、しかし敵意の眼差しを持ってして、
「いやだ」
 天使をキッパリと拒否した。クライエルは思わず立ち止まった。
「ふ……ふふふ、どうして」
 クライエルは微笑んでいるが、動揺は隠せない様子だった。
「それは――お前の狙いが、その悪魔の血にあるからだ」
 糾弾するように答える久遠に、クライエルはたじろいだ。随分焦っているようだった。
「な、何をおっしゃいますか……ひ、人聞きが悪いですねぇ」
「よく言うよ。お前が魔術結社の2人を襲ったんだろ? 自分の野望の邪魔になるから」
 久遠の告発。本当の敵は悪魔ではなく――天使。
「そっ――そんな事するわけないですよっ。わたくしは天使なのですよっ。あはははっ……」
 天使が薄っぺらい微笑を浮かべ……ふいに――その腕が久遠へと伸びた。
「なっ?」
 それは明らかに殺意を持った行為。いきなりすぎるアクションに反射が追いつかない久遠。
 間に合わない――久遠が思った刹那。
 ――ザザリッッ、と。
 横から銀色の何かが飛んできて、クライエルの腕に突き刺さった。
「なにっ――?」
 思わずクライエルは腕を引いて、それが飛んできた方を見る。久遠もつられて見る。
「――ったく、天使が一般人襲うなんて……そんな事していいのかよぉ? アア!?」
 それは魔術師のグレイ・ネオンライト。重傷で1人では動くことすらままならなかったのに、彼はふらつきながらも2本の足で立っていた。
「あらあら、慈悲として命だけは助けたものを……そんなに死にたいのですか? 人間の分際で出しゃばりますねぇ。ま、あなたは一般人じゃないから遠慮なく殺していいですよねぇ」
 クライエルは聖なる笑みのまま男に殺意を向けて――自分の腕に刺さった、2本の銀のナイフを抜き取ってその場に捨てた。
「なぁ……一つ教えてくれ、僕の血が狙いなのか?」
 久遠は天使に話しかけた。
「はい。わたくしがここに来たのは悪魔の血を手に入れるためです……と言っても始めは好奇心でした。悪魔が血を求め地上に来るのはありふれた現象ですが、そこに異端の神までも来たという事実と、どうやら悪魔の方にも事情がありそうだということ。そして魔術結社なる機関も動き出して何かあるとわたくしは確信しました……そして調べた結果、あなたに宿っているのは特別な力。それは――天使が神へと転生することのできる血だったのです」
「転生……神に、だと!? まさかそんな事……できるわけが……」
 反応したのはアノンだった。
「ええ。勿論初めは半信半疑でしたが、この地に降臨してグラットンさんから聞き出したところビンゴだったわけですよ。久遠さんに流れる悪魔の血は普通のものとは違う、かなり特殊なものなのです」
 魔王の血。そして、神・アノンの血。
「その血は天使という存在と対等のクラスでありながら、天使と対極のものでした」
 慈愛に満ちた顔で冷酷に周囲を見渡して話続けるクライエル。
「天使と悪魔はもともと同一であり、そして分断されたもの……つまり一つになれば……わたくしは神になれるのです。その血液は天使を神に進化させる秘薬なのです」
 天使はもはや正気を失った瞳で久遠を見つめる。天使が欲望に飲まれている。渇望している。
「だからわたくしは――久遠さんの血液を一滴残らず全て頂いて、そして神になりますっ」
「だ、誰がそんな事させるかよ……」
 久遠は後ずさり、天使は尚も彼を説得しようと試みる。
「わたくしが神になれば世界を創り変える事だってできます。神になった瞬間、膨大なエネルギーが生まれるでしょう。それは現在の世界を壊し、新たな世界が誕生するくらいに。だが安心して下さい。それは完全なる幸福。不完全な今の世界ではない、誰もが満たされた世界」
 世界を創り変える。これまでの汚れた世界を全て壊し、綺麗な世界を。
「久遠さん、わたくしが世界を素晴らしいものへ上昇させる事を誓います。だから協力して頂けませんか? あなたの犠牲で世の完全性を実現できるのですよ。だから――」
「嫌だ」
 久遠は即答した。そんなもの考えるまでもないから。こんなもの論議するにも値しない。
 久遠は、この世界で、上遠野坂眞由那がいる世界で往きたいのだ。
「……なら仕方ありません。強行する他ありませんね」
 クライエルは薄く笑って、久遠に向かって歩み始めた。
 久遠は身を強張らせる。
「安心しろ……異端を抹殺するのはオレ達シンジゲートの仕事だ……テメェはもう、完全なる敵だ。オレが削除する」
 満足に体を動かせる状態でないのに大言壮語を吐くグレイ。
「何を……言う。お前の相手は……ワタシだ」
 同じく体が思うように動かせないアノンが言った。
「……アノン。お前そんな状態で戦えないだろ」
「ふん、心配するな九縁。ここは本物の神として高慢な天使を裁いてやろうではないか」
「うふふ、異端の神が何を言いますか……分かりました、いいでしょう。みなさんをわたくしの慈悲でもって葬って差し上げます。これが天使としての――わたくしの最後の仕事です」
 クライエルが両手を広げた。すると――真っ白で、美しい翼が大きく広げられた。
 ふぁさふぁさと、幾本の羽がゆっくりと地面に舞い落ちた。
「こ、これが天使……」
 久遠は思わずため息を吐いてしまいそうになる。それほどまでの美だった。
 クライエルは慈しみの微笑みをもって、優雅に語りかけた。
「さぁ、どこからでもかかって――」
「もうかかっているよッ!」
 天使の台詞が終わらぬ内に、アノンが華奢な腕で拳を繰り出していた。
 しかし突然の不意打ちにも関わらず、クライエルはすらりとそれを躱した。
「あらあら、元気がいいですねぇ」
 いつの間に――アノンの背後に回り込んだクライエルが穏やかに言った。
「チィッ――」
 アノンはすぐさま振り返って、拳を連続で繰り出す。
 クライエルはそれらを最小限のわずかな動きで避けていく。
「無駄ですよぉ。どうやらあなたは今、大幅に弱体化しているみたいですねえ。今のあなたに勝ち目はありませんよ……ほらぁ!」
 クライエルはアノンの一撃を避けると同時にその腕をとって、くるりと赤子の手をひねるように地面に彼女を倒した。
「うっ……く、ああ……っ」
 仰向けに倒れたアノンは苦しそうに呻く。
 クライエルは無情にアノンの体の間に立って嘆く。
「命を絶つという行為はいつもながら悲しい事です。せめて苦しみを感じる間もなく排除してあげましょう……安らかに、眠りなさい」
 クライエルが右手で手刀を作り――死刑宣告するように高く高く掲げて、一気に振り落とす。
「っっっっっ――!?」
 だがクライエルの処刑が執行される直前、何かの気配を感じとったのか、クライエルは咄嗟にアノンの体から飛び退いた。
 刹那。
 ズザザザザッッッッッと、幾本もの短刀がアノンのすぐ横の地面に突き刺さった。
「――っぱ二番煎じは通じねーか……くそったれ」
 遠くには、立っているのが精一杯という様子で、グレイが舌打ちしていた。
「ろくに戦えないというのに、ちょこまかと邪魔ばかりを。困った人間です」
 男に顔を向け話す天使は、あくまで笑顔を崩さなかったが、その笑顔にはぎこちない綻びがあった。……怒っているのだ。
「ああ、だがこれが今のオレができる精一杯だ。悔しいがテメェの言うとおり……オレにはもう近接戦をやる程の体力は残っちゃいねぇ……」
「ふふ、そう宣言する事で天使であるわたくしに慈悲を請おうというのですか? 残念ですがあなたはもう絶対的な敵対者です。ですからわたくしは非情になってあなたを殺します」
 クライエルの注意は今、アノンからグレイに切り替わっていた。
 これが彼の狙いだった――アノンはその隙をついて、ブレイクダンスよろしく回転するように地面から立ち上がって、立ち上がる一連の動作の中で足技を繰り出し天使に喰らわせた。
「うぐっ――」
 不意打ちに対処しきれなかった天使は、側頭部にまともに蹴り技を受け、大きくよろめいた。
 アノンはそのチャンスを逃さない――。
 倒れそうになった天使の体を、まるで支えるようにしてその胸ぐらを片手で掴んで――思い切り自分の方に引っ張った。そして反対側の手で思い切りボディブローを放った。
「うぶぅっ!」
 これもクリーンヒット。
 グレイのおかげで反撃の機会を得たアノンは、うずくまりそうになった天使の体の下に潜り込んで――両足を揃えて一気に真上に蹴り上げた。
「いぎっ――ッ?」
 クライエルの体が上空へ高く舞い上がる。
 その後を追うようにアノンも素早く跳び上がって――空中でクライエルに追いつき、さらにクライエルの体を追い越してから――今度は地面に叩きつけるようにその体を蹴った。
「あっ、ああああああああああっっっ!!」
 天使は真っ逆さまに猛スピードで落ちていき、地面に激突した。
 地面を伝わる衝撃。飛び散る土埃。
 少し遅れてアノンが、天使の墜落した傍に着地した。
 ――それら一連の攻撃は一瞬の出来事だった。
「……す、すげぇ」
 久遠はようやく思い出したように吐息を漏らした。そもそも呼吸をするのさえ忘れていた。
 だが、アノンも余裕がある状態とは言えない。
「はぁ……はぁっ」
 流れるような速攻技にアノンも体力を消耗したようだ。
 呼吸を乱しながらもアノンは、たどたどしく言葉を放つ。
「はぁ、はぁ……ど、どうだ……今のはさすがのお前でも……え?」
 ――久遠にはその途中経過が、まったく見えなかった。
 見えたものは、アノンが話している途中、突然彼女の背後から、まるで彼女を抱きしめるような、包み込むような――そんな一種高尚なものが現れたような光景だった。
 気付けばアノンの体は天使によって抱かれていた。彼女の体を包み込んでいた。
「何を考えているんだ、天使っ!」
 久遠は駆け寄ろうかと思ったけれど、躊躇する。何を企んでいるか分からない。危険だ。
 クライエルはアノンを抱いたまましばらく動かない。
「くぅっ……は、離せっ」
 アノンの方は戸惑ったような表情をして、そこから抜け出そうともがいていた。
 すると――異変は突然起こった。
「……う? あっ、ああっ……な、何をした……天使っ」
 アノンの容態が急変した。苦しそうに顔を歪めた。
「あなたを解放しただけですよ。その体はあなたのものではないのでしょう」
 クライエルはアノンの体から離れて、酷薄に笑っていた。
「アノンをどうしたんだっ」
 また眞由那の体に対する拒否反応が出たのか。こんな時に――。
 久遠は思わずアノンの元に駆け寄ろうと、踏み出した――その時。
「う……っ? こ、これは……まずっ」
 アノンにつられるように、久遠も変調をきたした。
 頭がグラグラする感じ。意識が遠くなる感じ。
 久遠はこの感覚に覚えがあった。
 そう――これは2日前、アノンと天使と四宮凍亞が戦った時に発生した症状。
 自分が自分を失ってしまう現象。
 アノン曰く、それは自分の中に宿る悪魔の血の影響であり――その血はアノンの血の影響でもあった。
「う――うがあああああああっっっ!!!!!!」
 久遠は叫び声を上げた。奪われていく。体の自由が。意識が。自分の内にある凶暴な血に。
「――こ、これが凍亞の言っていた……魔族化か」
 遠くの方では片腕を押さえたグレイが驚いた顔をして見守っていた。
「あ、アノン……まずい。このままだと僕は……僕はまた……」
 また意識と体を乗っ取られて、無茶苦茶に暴れてしまう。
「…………」
 しかしアノンの方も説破詰まった状況なのか、顔を伏せたまま黙っている。
「ど、どうした……アノン。だ、大丈夫か……?」
 消えゆく意識の中でなんとか話す久遠。
「…………」
 アノンはいまだ沈黙を保っている。
「あ、アノン……」
 自分も辛い状態だが、今はアノンの事がきがかりな久遠。おぼつかない足取りでなんとかアノンの元まで来た久遠は、その小さな肩に触れると――。
「んん〜……なにぃ〜……って、あれ……九縁?」
 顔を上げて、のんびりした声で語る少女は、
「アノン? ……じゃない。まさか……ま、眞由那っっ!?」
 そのとぼけた顔を久遠は見間違えない。
 久遠の前にいる彼女は――上遠野坂眞由那の体をした、上遠野坂眞由那であった。
「え……? そうだけど……あれ? ここはどこ? なんで私こんなとこいんの?」
 知りたいのはこっちの方だった。なぜ? どうして? このタイミングで? 意識を保つのに精一杯の久遠はうまく思考がまとまらない。だけど確かな事は一つある。
 ――アノンは、眞由那に戻ってしまったのだ。


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